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月レヴィさんの書く、徒然色々……
 
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 今日の自分は、かなり憤っている。いきなりなにを、と思うがまあ聞いてくれ。

 今日も昨日に引き続き夜勤で、月レヴィさんはいつものように山手線に乗っていた。毎日乗ってから半周ほどする時間があるため、この時間を無駄に費やすのはあまりに不健康的だと感じたので、久しぶりに小説をいくつか買ってみた。
 元々本を読むのは好きなのだが、最近はまるっきしだった。読むのが好きなのに、その「好き」だという感覚が頭の中から完全にすっぽり抜け落ちていた。「忙殺」っていうヤツは、自分の中の日常生活の部分のいくつかを毟り取っていってしまう。
 仕事が忙しいときはロクにモノを考える余裕も無かったが、当然ずっと未来永劫忙しいわけは無く、また仕事の量なんてものは砂浜に押し寄せる波みたいなモノで、穏やかなときもあれば乱暴にぶつかるように迫るときもあるわけで、ビジネスマンとしてはその乱暴な波をどう捌くか、あるいは乗り越えたり乗ったりするかが重要なのだが、如何せん自分はその波をどうこうするといったことは苦手なようで、今年の下期の頭のように忙殺されてしまうのだ。
 喩えるなら、インベーダーゲームでインベーダーが画面半分くらいまで迫ってきているのに、撃てども撃てどもインベーダーの間と間の隙間を素通りしていき、一向に数が減らない状態。でそのまま間際まで来た後に名古屋撃ちで数を減らす。スペースインベーダーの世界ならいいのだが、これを現実の仕事に換算するとまるで良くない。まあ自分の仕事を逆にインベーダーに喩えるとすると、打ち落としても延々と上から流れてくるインベーダーゲームなので、この表現が正しいのかどうかは若干疑問ではあるが。

 話がそれたが、まあとにかく仕事が忙しくて活字を読むのこともなかったという話で、携帯でニュースを見たりはするがそれは「活字を読む」という行為とは大きくかけ離れたモノで、なぜそんなこと言えるのかというとあれは読むというより見る、だからだとしかいえない。それ以外に例えようがない。なんとなく頭のどこかに収めておいたりはするのだが、RAMのごとくすぐに内容は書き換わってしまう為、必ずしも残っていくわけでも蓄積されていくものでもない。

 とにかく、久しぶりに小説を3冊ほど買ってみた。読み物を読むというのは、その本の世界観に没頭ことこそが嗜好そのものと言える。文章から情景を感じ、そこに自分を置く。それこそが重要なのだ。
 だというのに、夜の第二次帰宅ラッシュ時の時間とも言える、午後8時以降の電車というのは時たま実に理不尽で腹立たしい事象が度々起こる。 今日は、椅子に座って読み漁っていた。いつも乗り始める駅は人がちょうど大きく入れ替わる駅なため、座席が空くことが多く、タイミングさえ合えば座ったまま降りる駅まで行くことは簡単なこと。だから今日もいつもどおり座って読んでいた。最低限乗り過ごさぬように少しだけ意識を車内アナウンスに耳を傾けられる程度に本の世界に没頭する。
 だがそんな自分だけの世界に没頭する自分に理不尽に襲い掛かる事象が起こった。突如左に二つ隣に座っていた男と、自分の目の前に座っていた、顔が見えないが頭がハゲた男が取っ組み合いを始めたのだ、車内で。なぜ顔が見えないのにハゲだとわかるのかというと、こちら側、つまり左に二つ隣の男~いちゃもん付けられた側~が、相手を見て「ハゲ野郎」と言っていたからだ。ちなみにその「ハゲ野郎」は、その二つ隣の男を「カマ野郎」と罵っていたが、どうみてもその男はノンケで検討ハズレの罵倒であると言えた。ちなみに月レヴィ介こと俺から見れば両方ともただの「酔っ払い」であり、ハゲかハゲじゃないかの違い程度でしか見分けがつかず、ストIIで言えば「リュウとケン」くらいの違いしかなかった。つまり同類でり、ただのハタ迷惑な乗客である。
 売り言葉に買い言葉というべき事象の応酬が始まり、双方の沸点が頂点に達するには一駅分の時間もいらなかった。ちなみにそのときの乗車率は80%ほどといったところで、談笑にふけっていた方々は黙りこくっていた。まあ誰しも大の大人の男二人が張り裂けんばかりの声で野良猫同士の威嚇のごとく耳障りな雑音を撒き散らし、まるで「殺す殺してやる」と子供のような口喧嘩から泥沼のリアルファイティングに移行するのも時間の問題だという状況になれば誰しも行方を伺い黙りこくる。
 自分はと言うと、実は正直なところ腹が立っていた。自分だけの世界から自分の意思に関係なく無理やり現実に引き戻されるというのは非常に不快だ。かくいう「孤独のグルメ」という漫画の主人公、井之頭五郎が食事を通して自分だけの世界に没頭しているところ、その店の店長がバイトの留学生を罵倒するという雑音を受け、現実に引き戻されたことに対する抗議に逆上して襲い掛かってきた店長に怒りのアームロックを繰り出していたが、そのときのシーンと今自分が直面している状況は非常に似ていた。
 これからどうするか、もはや今一度本の世界に舞い戻ることは不可能だ。だが不快な気持ちをこのハゲとカマはまるで理解できない。彼らは今自分達の世界に没頭していて、しかしその世界の力はとてつもなく大きく、これを崩すには国家権力級の力、つまり警察官クラスの人間が必要であった。しかしそう都合よく私服の警官が電車に乗っていたりなんてことは無く、それに例えいたとしても見てみぬ振りだってするだろう。鉄道には鉄道警備の人間もいるのだし。
 とにかく、とにかくだ。もはや彼らは周りが見えておらず、というかそもそも酔っ払いの喧嘩なわけで周りの気にするなどという気配りが出来そうも無く、簡単に噴火した、両方とも。途中俺の足の先にぶつかった、ふざけるな酔っ払い。酒臭いし声はでかいし、お互いが「ぶっ殺すぶっ殺す」と繰り返しており、その姿はケダモノ以下だ。人間以外の動物は、争いはするものの狩りを除いて相手が死ぬまで行為をしつづけることは無いと聞くが、これを見れば「人間以外」とわざわざ付け加えるのも頷ける。彼らは今の調子で殴り合いを始めればどちらか片方が死ぬまでやめないだろうし、実際にそういった事件は頻繁に起こっている。
 彼らの今後についてそんなことを考えてみたが、それで自分の憤りが静まるわけがなく、そうこうしているうちに目的の駅に着いた。喧嘩が始まってたった二駅だったのだが、不快な空気が場を支配しているときというのは一分が何十分にも感じるものだ。「やっと着いたか」と自分も含めて降りる人間全員が安堵の顔を浮かべていた。当然二人を除いて。
 しかしだ、そこでまた邪魔が入る。どうも彼らはこの電車を降りてくだらない意地を掛けて取っ組み合いを始めるつもりらしい。らしい、というのは彼らがしきりにそのようなことを言っていただけで、やるかどうかは若干の疑問が残る。取っ組み合いにはなったが、電車から降りればすぐに駅員が止めに入るだろうし、駅には現在、警視庁からやってきた警官が監視の目を光らせているのだ。さすがに公共の場でそんなことを始めたら、すぐに取り押さえられて連れて行かれるだろう。
 さてその邪魔というのだが、彼らは電車から降りようとしていた。前々から思っていたのだが、この行動は実に有りがちな展開でありながら何の意味があるというのか。電車の中で喧嘩を始めようが、降りて喧嘩をしようが、そのどちらもパブリックスペースであるのだから結局迷惑なだけなのだ。場所を変えるという行為になにも意味がなさない。これがもし「電車を降りてコロッセオで戦う」とかなら場所を変えるということにも意味があるだろうが、現実にはそんなことはありえなく、人ごみでごった返している電車の中から、人ごみでごった返している駅のホームで取っ組み合いの舞台を変えただけでなんの解決にもならない。この心理には若干興味があるが、今重要なのはそこではない。酔っ払い二名がもつれ合って入り口で引っかかっている、このことこそが現状の最大の障害なのだ。
 入り口をふさがれたら出られない。当たり前なことでこれを解決するにはこの二名を無理やり押し出すなり鉄山靠を繰り出すなりしてどかすか、華麗にスルーするかのどちらかである。ちなみに大人二人分の障害が横に立ちふさがっているので、スルーをするには吸血鬼のように霧化でもしない限り難しい。押し出すのもいいかもしれんが、なにぶん人ごみでホームは乗ろうとしている人で一杯で危険だ。
 ちなみに第三の手として、この二人に直接抗議するというものがあるが、その選択肢は入れなかった、なぜか。それはすでに実行に移してみたが結局何も変わらなかったからだ。つまり自分は腹立たせた相手二名に対して何らかの抗議をしたくなり、「邪魔だどけ」と二度、命令したのだが
、ついに彼らの耳に届くことは無かった。彼らは自分達のいざこざで手一杯で、他の人間のことなど小石程度のものとしか感じていない。彼らを現実に引き戻すには力が足りなかったのだ。
 そうこうしているうちに、彼らはとうとう駅のホームへ降り立った。そして降り立って階段のすぐそこで再び不快な罵りあいを始めた。自分はそのとき既に降りて階段を下りてしまったので、その後彼らがどうなったのかはわからないが、階段を折り終えてなお後ろでは彼らの殺気立った声が聞こえてきたので、その後はほど無く取り押さえられたに違いないだろう。

 とうとう、自分の怒りが発散されることは無かった。足をぶつけられた腹いせに、出る際にさりげなく踏み返してやろうかとも考えていたが、自分の鬱憤を晴らす以外の利点が見当たらなく、そもそもそれが利点なのかと聞かれると首を傾げたくなるため、その考えは却下した。
 で、今こうやってその鬱憤のガス抜きをするためにブログで徒然とひとり書き起こしているわけである。要するにこの文章は自分のガス抜きであり自己満足の塊みたいなものである。いや、塊そのものか。

 そんなわけでわざと長い文章に起こして書いてみたが、この文章の長さ自体が今の自分の憤りを表している。実際に書いてみてやっと気分が落ち着いた。別にこんなことで腹を立てていてもしょうがないのだが、こうやってたまに抜かないことには中途半端にヘリウムが入った風船みたいに、浮くの浮かないの、みたいな微妙な心情になって体に悪いし頭にも悪い。

 ちなみに最初何が言いたかったと言うと、「電車の中で喧嘩、ダメ・絶対」だけである。さあ、これから夜間作業だ、スッキリして仕事をこなすとしよう。

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